福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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「官から民へ」が切り捨てるもの
〈『部落解放』2004年5月号〉

(2004/05/20up)

    小泉総理は、いつも三つのセリフで国会を乗り切ろうとする。
 一、構造改革なくして景気回復なし
 二、備えあれば憂いなし
 三、民営化できるものは民営化
 この三つのセリフは、内容が間違っているか、使い方を間違っている。
 まず、「構造改革」の方向が間違っているし、また、「備えあれば憂いなし」として、有事立法を行ったこともほんとうにひどい。
 ところで、「民営化できるものは民営化」というのは、正しいのだろうか。
 いま、公立保育園が私立に切り替わり、公立の病院も私立の病院に変わりつつある。学校給食も「自校式」から給食センターへ、業務委託や民営化も進んでいる。
 医療、保育、教育、水といった、人が生きていくうえで不可欠なものが、「民営化」されつつある。
 公立保育園は、前年に比べて一八二カ所減り、民営保育園は、二六五カ所増えている。利用児童数でいえば、公営は五五五四人減で、民営は三万八二二三人増である。ここ五年間の数の推移も同じ傾向である。
 私は、公立保育園を削っていく大きな流れは、たいへん問題だと思う。
 今国会で、児童福祉法等の一部を改正する法律が成立した。公立保育所における保育の実施に要する保育費用を国庫負担の対象外にした。また、介護保険法等四法律に基づく地方公共団体の法施行事務経費を国庫負担の対象外ともした。
 えっ、こんなところをまず削らないでほしいと心から思う。
 私は、NGOの力を活用すべきだし、民間の力はすばらしいと思う。決して、NGOや民間の力を軽視しているのではない。また、何でもかんでも「官」でやれと言っているではない。しかし、この流れは問題である。
 「官から民へ」というのは、「官から民間企業へ」というものであり、決して、「官から民(たみ)へ」というものではない。
 しかも、最優先されているのは、経費削減、人件費削減である。
 公立保育園は、障害のある子どもを受け入れるが、私立の場合は、その比率が低い。「公」が責任をもって、さまざまな子どもが地域で生きていけるようにするということが、「民営化」のなかで、どんどん薄れていっているのではないか。
 公立保育所の保育士の平均月給は三〇万一七二三円であり、私立保育所の保育士の平均月給は二一万三九五〇円である(二〇〇二年、厚生労働省調べ)。つまり、公立の場合は約三〇万円、私立の場合は約二一万円である。
 そして、保育士の平均年齢は、いくつか。公立の場合は三七歳であるのに対し、私立の場合は三一・四歳である。
 つまり、私立の場合は、保育士さんが若く、月給が安いのである。
 公立から私立に切り替え、保育士さんを一年間の有期契約でやとい、更新をしない。ベテランは育たず、人件費を上げないようにする。そんなことが行われている。
 横浜市で、市立保育園が私立保育園に切り替わり、子どもたちが不安定になったりして(先生が、ある日突然、全とっかえになったのだから、当然である)、裁判が起こされた。
 人は、なんのために税金を払うのか。この社会で、みんなが生きられるためである。しかし、国会のなかでは「官から民へ」と言われ、国が責任を放棄し、ビジネスになるものはどうぞと言われている。「小さな政府をつくる」と言われながら、国民は負担増にあえいでいる。ミサイル防衛計画やイラク派兵のためなどには、巨額の税金をつぎ込んでいる。人々が生きていくのにほんとうに必要な「公共サービス」は、切り捨てられ、しわ寄せがきている。
 人々が必要とする「公共サービス」とは何かをきちんと論じていかないと、多くのものがあっという間に切り捨てられる。まず切り捨てたのが「保育」であることに、アゼンとしている。


【『部落解放』2004年5月号(533号)、解放出版社発行】




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