コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2005/07/05up)




◆ 「軍隊」という暴力に抗うために
――沖縄とインドを結ぶ視点 ◆


〈『部落解放』2005年2月号掲載〉

大城尚子

 
 昨年十月二日、北東インドのアッサム州ドゥーブリ地区、チラング地区とナガランド州ディマプルで爆破事件が起き、約六十人以上の死者、百人以上の負傷者が出た。住民が標的にされたのは今回がはじめてだ。北東インドにおいて、インドから独立を目指す複数の反政府組織が各民族のテリトリーを主張し、こういった暴動がたびたび起きている。また、これに類似する事件が東北インドでは頻繁に起きている。私が昨年十月から、国連先住民族作業部会で知り合った先住民族のNGOに入り、インド軍のArmed Forces Special Power Act(AFSPA/軍隊や治安部隊などに特別な権限を与える法律)の調査を始めたのはそのことに関係している。
 沖縄出身の私は米軍基地に囲まれたなかで育ち、基地の存在は当たり前で、レイプ事件やその他米軍基地が関係する事件は他人事だった。しかし、先住民族作業部会への参加を機に、沖縄人(ウチナーンチュ)は先住民族であり、先祖代々受け継がれている土地を強制的に奪われ開発できないばかりか、その土地から戦地へ向けて戦闘機が飛行していることを腹立たしく感じた。また、沖縄が抱える問題に対しても意識が変わり始めている。軍事基地は紛争地域だけの問題ではなく、軍事基地が存在する地域住民へ多大な被害・影響を及ぼしているのだ。多くの国家は国防の目的で軍事基地を置いている。しかしその国防目的で設置されている基地は周辺地域住民への人権侵害被害の上に成り立っている。いったいこの事実をどのくらいの人がきちんと認識しているのだろうか?
 私はここ北東インドで、沖縄における米軍基地とインド軍の問題を比較し、そしてその状況が地域住民にとっていかに劣悪で脅威的なものであるかを明らかにし、世界中に存在する軍事基地の縮小につなげていきたいと思っている。北東インド七州(アッサム州、アルナーチャル・プラデーシュ州、ナガランド州、マニプル州、メガラヤ州、トリプラ州、ミゾラム州)は、ビハール州の北から細く続くネパールとバングラデッシュの間の陸地をぬけ、ブータン、バングラデッシュ、ミャンマー、チベットに囲まれた山岳地帯にある。そのため文化的にもメイン・インドと差異が見られ、北部タイなどの山岳民族に見られる民族衣装や機織などの文化、そして独自の言語が存在する。
 私が住むアッサム州のグワハティや、小旅行で訪れたマニプル州インパールの街中は、ライフルを持ったミリタリーポリスが街中のいたるところに立ち、ジープで街中を巡回し、テロリストを警戒している。その光景は米軍の車両を毎日のように目にしていた私にとっても異様なものである。携帯電話の所持に関しても、テロリストを警戒してか、この地域には誰でも簡単に安価で購入できるプリペイド・システムのものはない。たしかに、この地域は「テロ」が頻繁に起き、学生運動も盛んで暴動になることもしばしばある。私が住んでいる場所の近くに、州政府の要人が住む住宅街があるのだが、そこは壁と鉄鎖で囲まれている。その光景は表では住民に圧力をかけている政府が、本当はこの社会を恐れているかのように見え、なんとも不思議である。また、内紛が絶えない地域であるため、多くの地域住民に精神疾患やストレス障害などの症状が見られるという。
 インドに着いて数日したころ、NGOの仲間が「爆発事件や暴行・拷問なんて日常の一部よ。死ぬときは死ぬの。それが運命、人生よ」という言葉を聞いて、「なぜ住民がそのような感情になり、苦しまなければならないのか」とむなしさを感じた。また、北東地域でのAFSPAによる拷問、レイプ問題や内紛をインド政府は表ざたにしたくないのか、外国人がアッサム州の一部とメガラヤ州のシーロン以外へ旅行する際には州政府からの許可書が必須となっている。 (おおしろ・しょうこ/AIPR<琉球弧の先住民族会>) 


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