コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2005/07/05up)




◆ 「未来」への種を蒔く――A SEED JAPANの挑戦 ◆

〈『部落解放』2005年5月号掲載〉

木村真樹

 
 日本の青年が主体的に国内外の環境問題に取り組むA SEED JAPANでは、「環境団体」と聞いてよく連想される「ごみ拾い」や「植林」といった活動はほとんど行っていない。一九九二年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「地球サミット(国連環境開発会議)」に向けた「A SEED国際キャンペーン」を皮切りに、環境問題を引き起こす最も大きな要因のひとつである現在の経済システムに着目し、その意思決定を行う国際会議などへの政策提言に私たちはこれまで取り組んできた。
 しかし、その提言活動を行っている一部の専門家と一般市民の隔たりは大きい。問題はますます複雑化し、先進国と途上国の経済格差も広がる一方である。そんな中、私たちA SEED JAPANにできることのひとつは、専門家と市民の間に立ち、専門家の取り組みを青年の立場からわかりやすく市民に伝えていくことだと思っている。
 そこで、環境問題を根本から解決するために市民にできることとして提案しているのが、「買う・働く・貯金する」エコライフである。「お金を使う(買う)」こと、「お金を稼ぐ(働く)」こと、「稼いだお金を預ける(貯金する)」ことを通して、私たちは日常生活の中で環境や社会に影響を与えている。このお金の流れをエコロジーに変革することが、環境問題を生み出す社会の構造そのものを変えていくとA SEED JAPANでは考えている。
 私がA SEED JAPANで立ち上げた「コミュニティ・ビッグバン・プロジェクト」は、市民の「貯金する」という経済活動に着目し、地域主体の新しい金融システムである「NPOバンク」の設立を目指すプロジェクトである。NPOバンクは、地域社会や福祉、環境保全のための活動を行うNPOや個人などに融資することを目的に設立された「市民の非営利バンク」のことで、「金融NPO」、「市民金融」などとも呼ばれている。一九九四年に設立された「未来バンク事業組合」(東京都)を皮切りに、「女性・市民信用組合設立準備会」(神奈川県/一九九八年)、「北海道NPOバンク」(北海道/二〇〇二年)、「NPO夢バンク」(長野県/二〇〇三年)、「東京コミュニティパワーバンク」(東京都/二〇〇三年)と、全国各地に続々と誕生している。
 NPOバンクの運営の特徴は、融資方針に賛同する市民やNPOが組合員となり、一口数万円単位の出資を行い、それを原資にNPOや個人に低利(一〜三%程度)で融資する、ということだ。融資先を決める際には、税理士などの専門家が財務面だけでなく、事業の社会性やオリジナリティといった多様な観点から審査を行う。融資申込者とは必要に応じて何度も面談し、融資実行後もウェブサイトやニュースレターを通して融資先を公開するなど、「顔の見える」関係づくりを心がけているため、国内のNPOバンクではこれまでに貸し倒れは一件も発生していない。出資者にとっては、元本保証がない、出資金を自由に引き出せない、などのデメリットもあるが、目に見える形で自分のお金が運用されることが最大の魅力となっている。
 A SEED JAPANコミュニティ・ビッグバン・プロジェクトがNPOバンクの設立を目指す地域は、NPO活動が積極的に展開されていながらNPOバンクが存在しない愛知県である。東海地方初となる今年三月のNPOバンク・セミナーを皮切りに、二〇〇六年四月からの融資開始を目指して、NPOバンクの「頭取」を講師としてお招きする連続講座の開催や、出資形態・融資形態・実施体制の三テーマに関する調査事業、NPO・企業・行政の協働による事業計画の策定など、現在準備の真っ最中だ。NPOバンクの最大のリターンは「未来」である。未来世代であるA SEED JAPANの青年たちの挑戦に今後ともぜひ注目してほしい。(きむら・まさき/国際青年環境NGO  A SEED JAPAN事務局長)

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