コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2005/07/12up)




◆ 地域住民無視のダム建設に抗議 ◆

〈『部落解放』2005年7月号掲載〉

大城尚子

 
 三月八日、アッサム州北部のゴガムク(Gogamukh)という町で「国際女性の日」を記念して地元の女性団体が主催したワークショップに参加した。主な議題は、二〇〇三年にインドの国営水力発電公社(National Hydroelectric Power Corporation=N.H.P.C.)により開始されたスバンシリ(Subansiri=アッサム語で「黄金の河」)川上流のダム建設(二千メガワット/MW)についてだ。
 インドの電力省は、今後の電力需要増大に対応するため二〇〇二年から始まった第十次五カ年計画を発表した。年間で十万MWの発電能力を増強する積極的な計画だ。これには、八兆五千六百億ルピー(約千七百億ドル)の投資が必要になるともいわれている。
 プロジェクトを取り仕切っているN.H.P.C.は、住民、とくに流域住民へのプロジェクトに関する充分な説明もせず一方的に建設を進めている。さらに、ダム建設工事のため国内から約四千人の労働者がこの地域に移住するといわれ、文化環境に対する影響はもちろんのこと、経済、健康面にも影響が懸念されている。とくに女性は健康被害を起こしやすく、衛生・健康面では、貯水池での伝染病の発生、魚の水銀汚染も懸念されている。
 ダム建設における共通の問題点に環境汚染問題があげられる。インドは全世界の四・七%を占める、世界で五番目の二酸化炭素(温室効果ガス)排出国であるとされている(二〇〇〇年)。このゴガムクでもダムに隣接して八つのジェネレーター(発電機)が建設予定であり、それは温室効果ガスの排出量に一四%もの影響を与えると予測されている。
 温室効果が進めば、ヒマラヤを源とするこの河川はその氷河が溶け出し、洪水を招く原因となる。さらにダム付近ではインフラ整備が進み、建築材などのために大量の森林が伐採されている。そのため上流で降った雨が、むき出しになった土砂を洗い流してダムに流れ込む。やがてダムは大量の土砂で埋まって使えなくなり、容積量を超えた水が原因でダムが崩壊し、大洪水を招く恐れがあることも予測されている。また、もともと森林地帯であったダムの水には栄養分が多く含まれている。このため、ダムは富栄養化状態になり、藻が異常繁殖、赤潮が発生したりする。この汚水を放流するため、下流域の汚染も懸念される。
 さらに、北東インドは頻繁に地震が起こる地域でもある。一九五〇年以前、ゴガムク地域は川であり、一九五〇年に起きた地震とその後に起きた洪水によって近隣山岳が削られ、約千人の住民たちが山津波にのみ込まれて亡くなった。その後、人々は現在のゴガムク地域に移り住み、一九六〇年までに町となった。この地域の住民にはこの災害の記憶が今でも生きており、危険性の高いダム建設を阻止しようと反対運動を行っているのだ。
 このダム建設には、インド生命公社(Life Insurance Corporation of India=L.I.C.I.)という保険会社が融資を行っており、人命を補償する一方で人命を危険にさらすプロジェクトにも手を出している。このワークショップは三月十四日の「国際川の日」まで開催され、その間に戦略会議を行い、L.I.C.I.地方オフィスへ陳情書が提出された。 (おおしろ・しょうこ/AIPR<琉球弧の先住民族会>) 
  


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