コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2005/10/05up)




◆ クレジット・サラ金が蝕む庶民生活
――今、貧困層が拡大している ◆


〈『部落解放』2005年10月号掲載〉

木村達也

 「今、サラ金が庶民生活を蝕んでいる」と言ってもピンと来ない人の方が多いと思う。しかしサラ金の借金が嵩み、その高金利や厳しい取り立てに追われ、平和でささやかな市民生活が大きく蝕まれ、根底から崩壊する事例が多くなっているのである。
 しかも恐ろしいことに、これが社会の表面にあらわれず、水面下でどんどん進行している。日本の人口一億二千万人の半分に当たる六千万人が労働者人口である。残りは幼児・子ども・学生・引退した老人たちである。サラ金・大手消費者金融六社(武富士・アコム・プロミス・レイク・アイフル・三洋信販)の口座数を合計すると千三百万口座、中小業者を合わせると約千五百万口座になる。口座数で割ると、労働者の四人に一人がサラ金で借りている計算になる。大手消費者金融の一口座当たりの融資残高は五十万円〜六十万円、ほとんどの借り主は金利だけしか支払っていないことを示している。そして一カ月あたりの利息は債務額五十万円とすると約一万一千円である。
 預貯金ゼロの低所得者世帯(だいたい年収四百万円未満の利用者が七〇%を超えている)の世帯主が借金をして、利息のみしか返済できない。当然二件、三件、四件と借りている人がいる。この債務者はもはや利息も支払うことができず、債務額を増加させるばかりである。サラ金の借金以外にも二億三千万枚のカードやクレジットの債務がある。日本人の四十〜五十歳代の労働者の四〇%は住宅ローンを支払っている。一方でリストラ・倒産による失業、事故や病気による支払遅延・支払不能が間違いなく発生する。こうして現在、日本には百五十万人以上の支払不能者(破産予備軍)が存在し、こうした借金が原因となって、犯罪・自殺(八千人)・一家心中・蒸発・離婚・失職・ホームレス化など、様々な病理現象が急増している。二十年前には一億総中流化と言われたが、今日本人で中流意識を持ち得ている人は二〇%を割っている。そして一部の金持ち階層を除き、多くの国民は貧困層への転落の恐怖に日夜怯えている。
 筆者は社会の階層化をもたらしている最大の原因は千五百万口座存在するサラ金債務であり、カード・クレジットによる過剰与信であると考えている。危ういバランスのもとにかろうじて消費生活の均衡を保っている低所得階層が、毎月一万五千円から二万、三万円と利息・手数料の支払いを強いられるようになれば、本人がそれと気づかない内に確実に貧困階層に転げ落ちていく。規制緩和・自由競争・自己責任・福祉の切り捨てが強調されるデフレ不況の今日の日本にあって、多重債務者・破産者の生活の再建・立て直しは大変に厳しい。
 行政は全国的な財政難の中で福祉の切り捨てに躍起になっていて、借金は個人の問題であるとして多重債務問題から目を背ける。行政は多重債務者の生活実態さえ把握できていない。目下のところ、行政は多重債務問題に全く無関心である。税金・公共料金などの滞納、生活保護世帯・犯罪が急増して行政コストが大幅にアップしている。にもかかわらず、サラ金批判の声がマスコミの声とならないのは、サラ金がマスコミの大きなスポンサーになっているからである。今こそ政治・行政・司法がこぞってサラ金・クレジットに蝕まれる庶民生活の防止と立て直し策に取り組むことこそ急務である。
(きむら・たつや/弁護士・全国クレジット・サラ金問題対策協議会事務局長)

全国クレジット・サラ金問題対策協議会  http://www.cresara.net/  


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