コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2007/06/27up)




◆ “悪友”との20年

〈『部落解放』2006年9月号掲載〉

山中登志子

 二百万部売れた『買ってはいけない』(金曜日/企画&編集&一部執筆)から七年になる。
 当時言われ続けたことは、「だったら、何を買えばいいの?」だった。そのひとつの答えとして二年前にインターネットショップ「通販あれこれ」(http://www.rakuten.co.jp/arekore/)をオープンした。スタッフ三人で探し出した選りすぐりのオススメ商品(牛乳、ほたるいか、浄水器、ジーンズなど)を紹介し、がんばっている生産者を応援中だ。『買ってはいけない』が告発型だとすると、「通販あれこれ」は提案型になる。
 さらに実践型として、萬株式会社(http://www.man115.com/)で三人で化粧品企画&プロデュースをしている。六月にはセカンドチャンス頭髪化粧品「OLA HAIR オーラヘアー」(特許成分配合)を発売した。まずは化粧品の素顔を知ることからだと、『化粧品成分事典』『プチ事典 読む化粧品』(いずれもコモンズ刊)を企画・編集した延長線上にある。その後、髪の毛から社会を見ていたら、育毛業界の狂騒曲はこまったものだと感じた。すすめられる育毛剤、養毛料に出会えない。「だったら作ってしまおう」と。
 そして開発したのが「オーラヘアー」。育毛効果がある成分(シシウド)の特許開発者である守屋義雄さん、ナノウオーターシステムを開発したニューメディカ・テックとの出会いから生まれた。髪のトラブルに悩む、黒髪を求める愛用者の声が老若男女問わず届いている。「通販あれこれ」にてイチオシ商品として販売中。基礎化粧品(化粧水やクリーム)も現在、企画中である。
 告発型はWEB新聞「My News Japan」(http://www.mynewsjapan.com/)でも続けている。スポンサーなしの自由なメディアで、いち生活者として素朴な疑問から社会を見ている。たとえば牛乳。パッケージやCMでは放牧牛が使われているが、日本で販売されている牛乳のほとんどは牛舎につながれて一生を過ごす牛の乳。これも「食から侵略する」という米国サイドが飼料を日本に輸出したいからだ。「モデル牛を探せ!」で連載中である。
 告発型「My News Japan」、提案型「通販あれこれ」、実践型「化粧品企画&プロデュース萬」にかかわるようになったことは、人との出会いが大きい。そして、わたしが二十数年抱えている病気との出会いも大きいと感じている。
 わたしは脳腫瘍患者で、下垂体腫瘍「先端巨大症――アクロメガリー」という稀少患者である。かれこれ二十年この“悪友”とつきあっている。
 脳下垂体にできた良性の腫瘍から成長ホルモンが過剰に分泌される病気である。手足が大きくなる、額や眼の上の突出、唇が厚くなる、鼻が大きくなる、下あごが突出するなど容貌が変わってくる。それも、ゆっくりゆっくり変化をはじめる。腫瘍のできた位置によって視力障害が出る人もいる。また、このホルモンの病気は糖尿病、高血圧、心不全、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群などの合併症が起こりやすい。わたしの場合、特徴的な症状をほぼ引き受けている。
 発病率は人口百万人当たり三〜四人。国内の患者数は約七千人と推定されるが、実際に治療を受けているのはその四分の一。症状が現れはじめて十年以上経って発見されることが多い。わたしは発見まで五年以上かかっている。
 頭にできた腫瘍をとるのに、一九八八年、一九九八年、二〇〇三年(二度)と四度の頭部手術、六度の入院を経験した。『買ってはいけない』が売れていた当時も一日七回の自己注射を打ち続けていた。腫瘍はまだ血管に巻きついている。
 顔が変わり、いろいろなところが肥大した。この“悪友”にはどこかにいってもらいたいのだけど、なかなかわたしから離れてくれない。
 「ブス」「オカマ」「変わった顔」とひどい言葉を何度か向けられてきた。そういった言葉を向けてくる人に対して、「この人はなんでこんなことを言うのだろう」と考えた。それとともに想像力が豊かにもなってきた。そして、社会的なこともよく見えるようになった。『買ってはいけない』もそのひとつだと思っている。
 昨秋、同じ疾患の患者と出会った。彼との出会いがきっかけになって今夏、「下垂体患者の会」の呼びかけ人の一人として活動を開始した。そして六月には自分の病気のことをカムアウトした。潜在患者に早く治療を受けてもらいたい、正確な情報を伝えていきたい、わたしのような思いをしてもらいたくないといった思いからだ。
 この半年間、二十年来の闘病記を書きあげる中で、病気の自分をどうにか受け入れられるようになってきた。もちろん百パーセントではない。
 ――美のヒエラルキーの中で生きている。
 ――健常者が前提の社会で暮らしている。
 そんな社会の中で“悪友”とも気長につきあい、これからもいろいろと発信していきたい。
(やまなか・としこ/編集家・「通販あれこれ」店長)

OLA HAIR オーラヘアー/TEL 03-5312-7751

下垂体患者の会
http://kasuitai.main.jp/


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