コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2007/06/27up)




◆ 貸金業規制法改正がNPOを潰す?

〈『部落解放』2006年12月号掲載〉

木村真樹

 「私の出資したお金が未来の子どもたちのために正しく運用されることを希望します」「一つでも多くの市民事業がこの地域で生まれ、地域の活力になることを大いに期待しています」「オルタナティブな生活、仕事、取り組みを応援するような融資にぜひ使ってください」
 これらは、私が代表理事を務めるNPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」(以下、momo)のウェブサイトに掲載されている「出資者の声」の一部だ。
 NPOバンクとは、一般の金融機関が融資をしにくいNPOやコミュニティビジネス、多重債務者の救済や共助的な助け合いなどの多様な資金ニーズに対して、可能な限り低利(年七・三%以下)で資金を提供することを目的に設立された、市民による非営利金融システムのこと。融資方針に賛同する市民やNPOが組合員となり、一口数万円単位の出資金を原資として、二〇〇六年十月までに北海道から愛知県まで九つのNPOバンクが十二億円を超える融資を行っている。
 しかし、そのNPOバンクたちが現在、逆境に立たされている。政府・与党や金融庁などで検討されている貸金業規制法の改正によって、NPOバンクの経済的な負担が大きくなり、団体の存続自体が危ぶまれているからだ。
 伝えられる貸金業規制法改正案のうち、主な問題点は以下の通りである。 @ 財産的要件を純資産三百万円(個人)、五百万円(団体)から一千万円(個人)、五千万円(法人)への引き上げ A 貸金業協会、個人信用情報機関への実質的強制加入による会費などの負担 B 貸金業登録手数料十五万円(三年更新)の増額  NPOバンクはこれまで、営利目的の事業に対する規制法である貸金業規制法の適用除外対象に含まれていなかったため、やむを得ず貸金業の登録を行ってきた。例えばmomoでは、二〇〇五年十月の設立総会を経て十二月下旬から出資募集を開始し、現行法の財産的要件である五百万円を約半年かけて集めてきた。そして、今年八月にようやく貸金業の登録申請を行い、その登録完了をもって融資活動を開始する予定で準備を進めてきた。しかし、現在の出資総額七百万円を全額融資に回したとしても、momoが融資開始時に想定する貸出金利(年二・五%)で年間収入は十七万五千円となり、現状でも十五万円の貸金業登録手数料以外にほとんどお金は残らない。
 こうした小規模なNPOバンクの活動は、営利企業では不可能なボランティア活動をベースとした低経費・高効率のしくみによって成り立っており、営利企業を念頭に置いた規制は本来、的外れといえる。今回の改正案がこのまま適用されてしまうと、NPOバンクの活動も停止せざるを得なくなり、その結果、地域の公益に役立っている小規模事業も停止してしまうことが懸念されている。
 このため、各NPOバンクは出資法の上限金利(年二九・二%)を利息制限法で定める年一五〜二〇%に引き下げる法改正の趣旨には全面的に賛成するも、非営利・公益・小規模のNPOバンクに対する規制強化には反対し、貸金業規制法からの適用除外を求めている。
 同じ金融庁が所管する金融商品取引法では、出資者に配当を行わないNPOバンクへの出資は規制の適用除外として明文化されている。これは営利目的の金融商品とは異なる扱いとし、無配当という点からも詐欺などへの悪用が起こりにくいことを法律が認めた実例だといえる。また、営利の貸金業者が専従スタッフ一名の人件費もまかなえない低金利の事業に今後参入してくるとは考えにくく、融資先の情報公開や公認会計士による金利の検証、「コモン・ボンド」と呼ばれる顔の見える関係者だけに融資を行う、といった方策により、営利業者による適用除外規定の悪用は防止できるのではないだろうか。
 今回の法改正のように、営利企業向けにつくられた経済法規や制度が、NPOなどの市民による社会的な活動を阻害してしまうという事態が起こり始めている。NPOバンクは今年ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行の日本版といわれている。世界的に評価されていることからも、日本での同様の取り組みをむしろ政策的に支援し、営利事業とは異なる非営利・公益の市民事業に適した経済法規や制度をつくり出していくことがいま求められている。
(きむら・まさき/コミュニティ・ユース・バンク momo 代表理事)

コミュニティ・ユース・バンク momo
http://momobank.net


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