コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2007/06/27up)




◆ 書くべきことを書く

〈『部落解放』2007年3月号掲載〉

山岡俊介

 関西では昨年春以降「同和行政」「同和利権」に関する告発報道が盛んにされているそうだ。「飛鳥会」業務上横領事件、旧芦原病院乱脈経営、奈良市職員休職事件といった具合だ。東京ではそれほど目立たないが、それでもTBS『報道特集』や複数の週刊誌でやはり大きく報じられた。
 独断で一言いわせてもらえば、「何を今さら」と思う。特措法が失効(〇二年三月)する以前の、ずっと利権が大きかった時分は見て見ぬふりをし、「弱くなったから叩き出した」だけではないのか。しかも、これら不祥事をもって解放運動そのものを否定するような偏向した論調まで出て来ている。『週刊新潮』の「あの『本田記者』今度は『解放同盟』に肩入れだって」(〇六年四月二十日号)などその典型例だろう。
 かく言う私は『噂の真相』(九六年五月号)で『部落解放同盟上杉佐一郎委員長の「不肖の弟」に対する“憂鬱の極地”』なる特集記事を取材・執筆したことがある。当時、住専問題が弾け、不良債権化した大口融資先は軒並み叩かれた。だが、上杉委員長(当時/故人)の弟の経営する会社のみ、大手マスコミは一切触れなかった。記事中でも紹介しているように、自主規制した結果だった。
 私も記事が出た後のリアクションをやはり心配したが、同盟側から抗議は一切なかった。手前味噌かも知れないが、当然、同盟側にも取材し、事実を歪曲せず書いたからだと思っている。
 こうしたマスコミが勝手にタブーとする対象は、相手が怖いからだけでなく、広告など利権絡み、「弱きを挫き、強きを助ける」スタンスにあるなど、事情はさまざまだが、他にも山のようにある。
 安倍晋三首相を始めとする大物政治家、高級官僚、警察汚職、メガバンク、電力会社、トヨタ自動車などの大企業、暴力団犯罪、創価学会、皇室問題……。もちろん、報道されるケースもあるにはある。だが、それは捜査のメスが入って当局のお墨付があるなど、リスクのないケースがほとんど。独自報道は皆無に近い。
 その点、週刊誌など記者クラブに属さない雑誌媒体はまだゲリラ的に報じるが、しかし、これとて大半は著名人絡み、また猟奇殺人など興味本位で、本当に困っている声無き者の声などまったく顧みていないといわざるを得ない。
 事件記者の端くれとして私自身十五年あまり報道の現場に身を置き、その間、潰れたり、骨抜きにされた記事はいくつあることやら……。一方で、武富士盗聴事件(〇三年十二月、武井保雄会長逮捕)や、さらに別の記事絡みで自宅を放火される(〇五年七月)という稀有な被害者体験をするなかで、大手マスコミの底なしといっても過言ではない腐敗振りをしみじみ感じた。と同時に、自分で媒体を持つしかないと思った。
 その点、幸いにもこの間、インターネットが急速に普及し、格安で自分でも記事を配信できる環境ができた。
 インターネットの普及で情報過多などという向きもあるが、とんでもない。私に言わせれば、大半は出所不明の匿名で、“便所の落書き”に過ぎないと思っている。
 そんな状況の中、本名を名乗り、無料のメールマガジンにてスタートした。書くテーマは一貫して「政・財・官、マスコミ、闇社会と、あらゆる巨悪追及の情報」。そして三年余りの試行錯誤を経て、二〇〇六年五月にスタートしたのが「アクセスジャーナル」という有料の記事配信サービスだ。年会費は九千円(半年五千円)。現状、アルバイトを一人雇っているだけで、記事は日替わりとはいえ私一人。私が風邪でもひいて寝込めば、記事は止まる。
 そんな頼りない、自分でいうのもなんだが怪しげなサイトに、すでに七カ月あまりにして二千人近い方が入会してくれているのだ。ネットが普及したとはいえ、大手マスコミが紙媒体と並行して記事配信しているケースを除けば、スポンサーを持たず、ネット購読料だけで運営している報道系記事配信サービスは皆無といっていい。
 ネットジャーナリズムなるものは、まだ生まれていない。その現状を思えば、専用事務所を借りても、すでに黒字化の目処が立っている私のケースは決して自画自賛ではなく、画期的なことだ。
 大手マスコミが書かない、あるいは書けない、まだ報じられていないテーマ、または情報を流せば、まだ日本人は空気と水同様、情報もタダと思っている者が多いといわれるが決してそんなことはないということだろう。有り体に言えば、それだけ大手マスコミが読者から飽きられているともいえそうだ。
 現状、「アクセスジャーナル」は自分の得意分野ということで企業情報が多いが、経営が軌道に乗れば、環境や医療、福祉などもっと身近な、さらに国際問題ももっと幅広く取り上げ、識者に原稿をお願いしたいと思っている。
(やまおか・しゅんすけ/ジャーナリスト)

アクセスジャーナル
http://accessjournal.jp/


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