コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2007/09/20up)




◆ 友へ、友よ。―きみは憲法の危機に向き合っているか

〈『部落解放』2007年9月号掲載〉

白川勝彦

 自民党が「新憲法草案」を発表し、先の通常国会で国民投票法が成立した。改憲にしろ護憲にしろ、これまではひとつの政治的立場の表明という程度にすぎなかったが、これからは違う。とくに改憲を表明する者は、現実に提起される憲法改正に賛成・協力、あるいはこの動きを容認するということなのである。
 そもそも論としていうならば、憲法改正の一般的な是非が問題なのではない。憲法に改正手続がある以上、現在の憲法をさらに良い憲法にするために改正することそれ自体を否定する者はいないであろう。問われているのは、自公“合体”政権が行おうとしている憲法改正とその動きに対し、賛成なのか反対なのかということなのである。自民党の新憲法草案をみれば、明らかに危険な内容の憲法改正であることは明らかである。もしそのような憲法改正案が衆参両院の総議員の三分の二の賛成を得て発議されることがあるとすれば、それが問題なのである。本当にこのような憲法改正案が衆参両院の総議員の賛成を得て国会から発議されることがあるのだろうか。それはそんなに簡単ではないと私は思っている。
 しかし、多くの人々が不安を抱くのは、民主党の憲法改正に対する態度がいまひとつハッキリしないからではないだろうか。民主党でも憲法改正は必要だと考える国会議員がかなり多くいるというアンケートがある。そうすると憲法改正案が衆参両院で三分の二の多数を得ることは十分に考えられるのである。自公“合体”政権が行おうとしている憲法改正に賛成の民主党議員がいるのであれば、そのことが問題なのである。民主党はそのことを早晩ハッキリとせざるを得なくなるだろうし、またしなければならない。そのような民主党の国会議員を許容しているようでは、民主党はいったいどういう政党なのだという疑問を多くの国民が抱くのは当然である。
 そもそも憲法は、政治的なものである。どのような政治的立場にあるものが憲法改正を主張しているかで、その中身はだいたい分かる。わが国で長い間憲法改正を主張してきたのは、私が“右翼反動”と呼ぶ勢力である。私が改憲派の人々を右翼反動と呼ぶのは、この人たちが現実に起こる問題を解決する方法として、明治憲法的な秩序に回帰しようとするからである。語弊があるとするならば、明治憲法的な秩序に頼ろうとするからである。だから反動なのである。右翼と呼ぶのは、彼らの主張に狂信的かつ絶対主義的な神権天皇制や軍事的ファシズムと一体となった偏狭な国粋主義が随所に感じられるからである。戦前、“右翼”と呼ばれた人々がこのような支配体制を作る上で“戦闘的”役割を果たした。テロもこの人たちによって惹き起こされた。
 このような右翼反動が進めようとしている憲法改正が、多くの人々の賛同を得ることはそんなに簡単なことではないと私は考えている。しかし、そのためには偽装された憲法改正勢力の本性を暴露していかなければならない。護憲派と呼ばれる勢力はもっと本格的な憲法論議をしなければならない。護憲というと、相変わらず憲法九条一本槍だ。しかし、憲法九条二項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」というものを現状に合わせるものにするだけなのだという改憲派の主張が、憲法改正の大きなテコになっていることを率直に認めなければならない。
 公明党は「加憲」などとわけのわからないことをいっている。しかし、国民投票法の成立を可能にしたのは、公明党であった。最後は自民党の新憲法草案に賛成するのであろう。公明党だけではない。すべての政党や政治家が最後は憲法に対する態度を明らかにしなければならなくなる。
 私は国民の現在の憲法に対する支持は非常に強いものがあると思っている。右翼反動が狙っているような憲法改正は、そう簡単にはできないと私は考えている。憲法九六条が定める、国会の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」というハードルは、依然としてきわめて高いのである。しかし、そのためには、日本国憲法が果たしてきた役割を改めて見直さなければならない。
 日本国憲法は、わが国で“自由”を本格的に認めた最初の憲法であった。しかし、自由と同じ程度に“平等”ということを認めた憲法でもあった。憲法一四条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」や二五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」は、平等を高らかに宣言したものであった。部落解放運動の大きな武器になったのではないか。右翼反動は、憲法のこうした役割をいつも苦々しく思い、これを変えていこうとしているのである。

(しらかわ・かつひこ/元衆議院議員・弁護士)

リベラル!! リベラリスト(自由主義者)白川勝彦Webサイト
http://www.liberal-shirakawa.net/


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