コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2010/2/22up)




◆ 沖縄民衆の声にヤマトゥはどう応えるのか

〈『部落解放』2010年2月号掲載〉

目取真 俊

 この文章を書いている二〇〇九年一二月一五日現在、米海兵隊普天間基地の「移設」をめぐる問題は、「移設」先の決定を先送りするという政府方針が出され、辺野古以外の場所を模索するという鳩山首相の意向が示されている。この文章が載った『部落解放』誌が読者に届く頃には、どのような動きになっているかわからない。ただ、沖縄にとって息をつけない状況が続いているのは間違いないだろう。
 〇九年八月三〇日の衆議院選挙で自公政権が倒れ、民主党を中心とする連立政権が誕生した。沖縄では普天間基地の「県外・国外移設」が実現するものと期待が高まったが、それはすぐに裏切られた。
 北沢防衛相は就任直後から「県外移設」は厳しいと口にし、辺野古沿岸部への新基地建設という現行計画を進めようとした。一方で、岡田外相は「嘉手納統合」を持ち出して検証作業を始めた。鳩山首相の発言も二転三転し、選挙前に「最低でも県外」と言ってきた公約をなし崩しにしようとする首相や閣僚たちに対し、沖縄では失望と怒りの声が高まった。
 しかし、北沢防衛相や岡田外相はそれを無視して、「移設」先の年内決着を図る動きを活発化させた。民主党は「県外・国外移設」を言ってきたが、それは選挙用の建て前であり、党中央の本音は「日米合意」に基づく現行計画か米国が容認する範囲での「微修正」を落とし所と考えているのではないか。そういう疑問と不信はかねてからあった。その本音がいよいよ現実になろうとしている、という危機感が沖縄では強まった。
 そういう状況の中、社民党沖縄県連が間近に迫った党首選挙に照屋寛徳議員の擁立を打ち出す。それに反応した福島瑞穂党首が、現行計画なら連立政権離脱を示唆する表明を行ったことで、岡田外相らの年内決着を図る動きが鈍った。その後、冒頭に述べた「移設」先の決定を先送りするという政府方針が示されるのだが、それに対し大手メディアは、鳩山政権が「日米合意」よりも社民党・国民新党との連立維持を優先させたと報じた。
 確かにそういう側面は事実としてある。だが、大手メディアが無視する先送りの最大の理由は、沖縄における辺野古新基地建設反対、普天間基地「県内移設」反対の声の高まりである。福島党首の連立離脱を示唆する表明にしても、鳩山首相の辺野古以外を模索するという発言にしても、沖縄県民の意思を無視してことは進められないという認識により生み出されたものだ。
 私は、衆議院選挙のマニフェストに普天間基地の「県外・国外移設」を入れることを回避した時点で、民主党中央は内々では、「日米合意」通りに進めるしかない、と考えていたのではないかと見ている。それは鳩山政権発足後の北沢防衛相や岡田外相の言動からしても明らかだろう。現行計画推進か「嘉手納統合」かという違いはあっても、二人が共通して打ち出していたのは「県外・国外移設」は選択肢としてあり得ない、ということだった。
 しかし、それに対する沖縄からの反発は、民主党中央にとって予想をはるかに上回るものだったはずだ。民主党県連など政権与党は言うに及ばず、自民党県連や沖縄の経済界までもが、「県外移設」を口にし始めたのだ。「県内移設」推進では県民から見放され、選挙をたたかえないという声が、自民党県連内から出てきて、沖合への「修正」を主張してきた仲井真知事が孤立する事態さえ生み出された。
 このような沖縄の状況を無視して、現行計画か「微修正」で年内決着を強行すれば、沖縄県民の怒りと不満が噴出し、「友愛」を掲げる政権にとって致命的結果をもたらす。大手メディアが日米同盟が危機に瀕すると煽り立てても、辺野古新基地建設を強行して反対運動に火がつき、大きな混乱が生じれば元も子もない。鳩山首相はそう判断せざるを得なくなったのだ。
 これまで辺野古・名護をはじめ沖縄各地で一三年余にわたり反対運動が続けられてきた。それによって県民の七割近くが辺野古新基地建設、普天間基地の「県内移設」に反対という世論が生み出された。こういう反対運動や世論がなければどうなっていたか。鳩山首相は辺野古現行計画か「微修正」でとっくに決着していただろう。それを許さなかったのは、まさに沖縄の民衆の力である。
 だが、問題はこれからだ。米国政府や自民党、公明党、大手メディアによる「日米合意」を守れ、という恫喝や批判、世論誘導が一層強まる。普天間基地固定化の脅しもある。沖縄に生きる者は自らの命と生活を守るためにたたかうしかない。ヤマトゥに生きるあなたたちはどうするのか。米軍の侵略戦争のための基地を造らせず、普天間基地の閉鎖、返還を求める運動を全国から起こしたい。

(めどるま・しゅん/小説家)

海鳴りの島から
http://blog.goo.ne.jp/awamori777


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