コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2010/6/2up)




◆ 「悪魔の兵器」地雷と闘い続けて

〈『部落解放』2010年5月号掲載〉

大谷賢二

 朝鮮半島、中国への侵略からはじまり太平洋戦争に突入した日本が、ポツダム宣言を受諾し敗戦した一九四五年から六五年が経ちました。この間に日本は、新憲法の下、経済発展と繁栄を続け世界第二の経済大国といわれるまでになってきています。
 現在、アメリカに端を発した世界大不況の中で、国内でも厳しい生活を強いられている人も多く、経済格差の中で苦しむ人も増えてきています。そのような中で、国益中心主義が台頭しています。アメリカのブッシュ前大統領が推し進めた国連無視、国益中心の一国主義は、世界中に戦争の惨禍をもたらし、イラクで、アフガンで、パレスチナで、今も罪のない人びと、子どもたちを苦しめ殺し続けています。国益中心主義は究極、利害のぶつかり合いによる戦争への道に繋がるのです。日本が六五年にわたって平和を享受している間にも、発展途上国と一部の先進国の格差は広がり続け、テレビで「大食い選手権」が放送されている同じ時にミルクやご飯を食べることのできない子どもたちが毎分のように死んでいるのです。
 同じように、地雷の問題も、日本のように平和で安全な国が当たり前ではなく、世界約七〇カ国で被害が出続けているのです。
 私が一九九七年にカンボジアでの地雷被害の悲惨さに直面し、カンボジア地雷撤去キャンペーン(以下CMC)を立ち上げて一二年の時が流れました。もともと私一人の思い、一人からの行動でしたが、身近な友人知人から呼びかけ始め、本業の広告イベント業を通じて接触のあった著名人の方々にも思いを伝えていく中で、この運動は、一人の活動から福岡のNGOへ、そして全国に支援者や事務局をもつ国際NGOへと広がってきました。
 それには、伝えることを大切にしたこともあると思いますが、「一〇〇円玉一枚で、一平方メートルの地雷原をきれいにできる!」「六〇〇〇円で被害に遭った子どもたちに義足を作ってあげることができる!」というわかりやすいキャッチコピーや、「カンボジア地雷撤去キャンペーン」という、名が体を表すネーミングも良かったのではないかと思います。また、全国からの応募者をカンボジア現地に案内するスタディーツアーを毎年実施しています。カンボジアの現状や地雷被害の悲惨さ、そこでのCMCの活動をつぶさに見てもらい、「みんなで集めた募金を、みんなで届けよう!」というキャッチフレーズ通りに地雷撤去現場や、支援先の病院で募金を手渡してきたことも要因のひとつでしょう。
 現在では、福岡の本部をはじめ、国内一〇カ所の事務局とカンボジア、バッタンバン州の現地事務局を拠点に活動は全国に広がり、カンボジア支援と国内での地球人教育に力を注いでいます。
 カンボジアは、日本の約半分の国土に約一三五〇万人が暮らしていますが、一人当たりの国民総生産(GDP)は五九七ドル(日本の六〇分の一)と世界最貧国のひとつに数えられています(二〇〇七年)。その上、ベトナム戦争に続く内戦によって国土は荒廃し、六〇〇万個ともいわれる地雷が残され、今でも毎日被害者が出続けているのです。
 CMCはこれまで、さまざまなイベントや街頭キャンペーン、学校での授業や講演によって、その厳しい現状を多くの人に知らせ、支援金を得ることによって現地での活動を展開してきました。現地のカウンターパート(受け入れ先)を通じての地雷撤去や被害者救済をはじめ、地雷撤去後の土地での学校建設や運営。地雷原での農業支援、地雷被害者の心の支えとなるラジオ番組「ボイス・オブ・ハート」の制作・放送。これらの活動を継続する中で、カンボジアでの地雷被害者はCMC活動開始の一九九八年以来五分の一に減ってきました。
 今年二月、第一四次スタディーツアーで全国から一五名を連れて現地に入りました。CMCが今年中学校の建設を予定しているバンティアイミエンチャイ州マライ郡のトゥールポンロー地雷原では、地雷撤去が着々と進められていました。重機を使ってジャングル地帯の灌木をなぎ倒し、手作業による地雷探査を実施する中で、たくさんの対人地雷や不発弾、それに対戦車地雷までが発見され、今回その爆破作業にも立ち会ってきました。ものすごい爆音と地響きの中で次々と爆破されていますが、予想されたより地雷の埋設量が多く、五月半ばまで撤去作業は続くようです。学校建設はその後着工されます。
 一方、地雷被害は残念ながら続いており、二月二五日に訪れたバッタンバン州のエマージェンシーホスピタルには、二月二四日に被害に遭った農民のクム・サランさん、二三日に被害に遭ったジョ・サーンさん、また、一七歳で草刈り中に被害に遭ったカイ・ブティさんなどの姿があり、地雷被害の現実がそこにありました。
 このように、世界に目を向ければ、二一世紀の今なお、同じアジアの国で地雷被害が続いており、何の罪もない人びとが苦しんでいることを知ることができるのです。地球人として、自分にできることがあることに気付くのです。

(おおたに・けんじ/カンボジア地雷撤去キャンペーン(CMC)代表)
http://cmc-net.jp/


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