コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2011/6/10up)




◆ 東日本大震災、韓国からのメッセージ

〈『部落解放』2011年6月号掲載〉

宮崎善信

 はじめに、二〇一一年三月一一日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災された方々に心よりお見舞い申し上げますと同時に、一日も早く正常な生活に復帰できるようお祈り申し上げます。
 さて、この大きな震災被害に対して、国内はもとより海外からも人的、物的な支援が続々と行われ、新聞、テレビ、インターネットなどさまざまなメディアを通じて激励のメッセージが寄せられてきている。今回は、そのなかでも特に、筆者が二〇年来かかわってきた隣国・韓国におけるメディアに見られた報道からいくつかを取り上げ、特徴点を指摘すると同時に、今後の日韓の交流の展望について考えてみたいと思う。
 地震直後から韓国メディアは大きな関心を寄せ、津波や原発事故など想像を超える地震被害を伝える一方、惨禍に見舞われながらも冷静沈着で、しかも他人をも配慮する日本人の姿に驚嘆する報道が多く見られた。また、今回の報道ぶりを通じて見えてくるもうひとつの特徴は、日本・日本人を隣国・隣人として考え、行動しようという強いメッセージが発せられたことだといえるだろう。
 有力紙『朝鮮日報』はいち早く紙面を通じて「日本を助けよう運動」を展開し、関連記事の掲載はもとより救援募金運動に乗り出した。『朝鮮日報』社説“言葉ひとつにも日本国民を気遣う配慮を”(三月一五日付)では、「苦難を強いられている日本の国民をいたわるには、何よりも日本の現況を日本国民の立場から見て、感じ、考える姿勢が求められる。日本人は秩序ある市民意識を示し、地震に驚いた世界を今一度驚かせている。韓国国民がこうした日本国民の勇気を奮い立たせる言葉をかけ、援助の手を差し伸べられればと願っている」。
 また、『中央日報』社説“大災難より強い日本人”(三月一四日付)によると、「全世界が日本の大地震に二度の衝撃を受けている。まずマグニチュード九・〇の巨大地震がもたらした残酷な被害だ。さらに驚くのは不思議なほど冷静な日本人だ。死の恐怖の中でも動揺しない。避難要員にしたがって次々と被害現場を抜け出し、小学生も教師の引率で列を乱さず安全な場所に移動した」。
 日本人への賛辞は続く。『中央日報』コラム“日本はある”(三月一六日付)によると、「日本人の落ち着きと秩序は配慮精神の勝利だ。その徹底された節制は感嘆を呼ぶ。世界は文化衝撃を受けている。日本の底力だ。それは日本の国格とイメージを高めている」。そして、『東亜日報』社説“日本の危機対処から学び、静かに支援しよう”(三月一五日付)では、「最悪の災難を前にして忍耐心と冷静さを失わない日本人の姿は我々を驚嘆させる。隣国が見舞われた史上最大の災難に目を背けるわけにはいかない。先進国の国民のプライドに十分配慮しつつ、静かに支援の手を差し伸べなければならない」と、日本人のプライドを気遣う。
 日本や日本人に対する賛辞は、同時に自国・自国民に対する戒めとなる。「私たちは自らに厳しく問う必要がある。災難と危機に見舞われたとき、韓国社会の節制できない思考と対応方式を見直す契機にしなければならない。私たちは依然として日本から学ぶべきことが多く、先進国へと進む道のりも遠い」(『中央日報』社説/三月一四日付)。
 このような韓国での一連の動きについて、『中央日報』コラム“日本はある”(三月一六う日付)はその背景として、「韓国国民の間に〈頑張れ、日本〉運動が広まっている。自発的拡散だ。その土台には韓流がある」と、韓流を挙げている。同コラムは続けて、「日本の大衆文化の開放は金大中大統領の時代だ。当時、金大統領は日本の国会で〈韓日関係は非常に長くて深い。(中略)五〇年にも満たない不幸な歴史のために一五〇〇年以上の交流と協力の歴史を無意味なものにするのは非常に愚かなことだ〉という趣旨の演説を行った。このような認識は新鮮だった。その大胆なアプローチを拡大しなければならない」とする。
 その「大胆なアプローチ」を阻む障害になりうるのが歴史認識問題や竹島(韓国名/獨島)問題であるが、『朝鮮日報』コラム“日本人の苦痛を忘れるな”(三月三〇日付)では、「日本政府は三〇日、予定通りに中学校の歴史、地理、公民の教科書の検定結果を発表する。獨島(日本名/竹島)は日本領だという内容が強化される見通しだ。せっかくの韓日友好ムードに冷水を浴びせるのは明らかだ。しかし、それによって、死の恐怖に苦しむ日本の平凡な人々に対する温かい心まで捨ててはならない」と呼びかけている。
 文字数の関係でごく一部しか紹介できなかったが、次の言葉をもって締めくくりたいと思う。
 「日本は私たちのパートナーだ。両国がお互いに未来に向けて刺激し合っていかなければならない。災難を乗り越えられるように励ます関係にならなければならない。それが日本大地震後の両国親善のロールモデルだ」(『中央日報』コラム“日本はある”三月一六日付)

(みやざき・よしのぶ/カトリック長崎大司教区 教区本部事務局 福音化推進部)


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