コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2013/3/21up)




◆ 虹の彼方に

〈『部落解放』2013年3月号掲載〉

遠藤比呂通

 一九九七年から数年間、大阪市住吉区にある住吉解放会館で、レインボーセミナーを担当しました。中学高校生を中心として、映画や歌に現れたアメリカ文化について学び、言語と文化の壁を乗り越えようという趣旨でした。
 人種間の結婚差別をテーマにした「招かれざる客」(Guess Who,s Coming to Dinner)という映画について学びました。サンフランシスコが舞台です。人種差別に批判的な両親に育てられた娘が、シドニー・ポワチエ演ずるアフロアメリカンの医師プレンティスとの結婚を承認してもらおうと親の家を訪問するという設定です。父親がまさか結婚に反対するはずはない、と娘は考えています。しかし、父親は、自分の娘の苦労を考えて、反対しようと決心します。
 結婚するカップルには、様々な困難がまっています。その中でも特別な困難は、親との関係が切れてしまうことです。世間がどうであれ、親の態度こそ結婚差別の悲劇の温床となっていることをこの映画はテーマにしています。
 レインボーセミナーを受講していた諸君は進学し、大学を卒業して、結婚し、子育てに励んでいます。しかし、レインボーセミナーが行なわれた会館を、二〇一三年度をもって大阪市は廃止するという方針を打ち出しています。さらに、給付であるはずの解放奨学金について、返還を求めて、大阪市は裁判所に出訴しようとしています。
 差別にともなう、様々な困難を乗り越えて、進学し、就職し、結婚し、生活していく。その姿こそ、我々の社会の希望であり、虹なのではなかったでしょうか。その生活自体を破壊してしまう政策が許されていいはずはありません。
 会館の廃止を打ち出した橋下市長は、知事に就任するとき、「自分の経験に照らして、部落差別は存在している」と議会で明言していました。「招かれざる客」では、結婚に反対していた父親は、「なぜ、男の人たちは年をとると、若い頃の情熱を忘れてしまうのかしら」というプレンティスの母親の非難に目覚め、結婚を心から祝福するようになります。大阪市も、その原点に戻って、政策の見直し・撤回を行なうべきです。

(えんどう・ひろみち/西成法律事務所弁護士)


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