コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2013/9/25up)




◆ 格差・貧困、分断と労働組合

〈『部落解放』2013年9月号掲載〉

川村雅則

 格差・貧困問題の解消をめざす私たち反貧困ネット北海道(以下、ネット。http://www015.upp.so-net.ne.jp/hanhinkondo/)の活動を紹介する。
 ネットには、労働組合をはじめ、生活保護、野宿者支援、医療・障害、子どもの貧困やひとり親世帯の貧困など、いろいろな分野の貧困問題に取り組んできた団体・個人が集っている。それは「多重」な困難や悩みを一身に背負って相談に来られるという状況が広がるなかで、あるいは貧困問題を生み出す大きな流れに対して、反貧困の側もつながり共同していく必要がある、そうした問題意識が背景にあった。それは他の地域でも同様だろう。
 ネットを立ち上げてからは、専門家が無料で相談に応じる「労働と生活の総合相談会」の実施のほか、貧困問題の啓発活動として、各種の集会・学習会・イベントなどを実施してきた。国政選挙では、貧困問題への取り組み(政策)に関して、各政党への公開質問も繰り返し行ってきた。札幌市議会で審議されている「公契約条例」の制定運動にも深くかかわっている。体制も予算も脆弱ながらも、それなりの活動を展開してきたと思う。
 だが、高額所得者のお笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことを契機とする、一連の生活保護バッシングを前に、貧困問題や反貧困政策に対する正確な理解が必ずしもひろまっていたわけではないことを痛感させられた。結局私たちはいまだ、可哀想だから助ける、可哀想でないから助けなくてよい、という水準を打破できていないのかもしれない。それは、生活保護をあつかった大学の授業での学生の反応からも感じていたことだ。「伝える」作業の重要性をこれまで以上に自覚したい。
 もっとも、ワーキングプア問題など労働分野の調査研究に従事してきた私には、人びとがバッシングに走る気持ちはわからないでもない。このところ、非正規労働者調査で、生活保護受給者に対する批判が増えてきたことを感じる。メディアの責任もむろんあろうが、たしかに、低賃金で昇給もなく(場合によっては社会保険からも排除され)雇い止めの不安にさらされながら将来展望もなく働き続ける彼らにとって、働かずして(なかには自分たち以上の)一定の収入が得られ、不十分ながらも住宅保障(住宅扶助)もあり、安心して医療にかかれる生活保護受給者は、「ずるい」とみえてしまうのだ。いや、生活保護受給者うんぬんの前に、隣で働く正規労働者や労働組合が「敵」とみられている、労・労のそういう「分断」状況のひろがりという深刻な事態こそ、ここで強調しておかねばなるまい。
 むろん以上の問題の本質は、現役(非正規)労働者の低すぎる労働条件、社会保障制度からの排除などにあり、めざすべきは、労働条件の底上げと、公的な総合生活保障の構築にあるのは言うまでもない。
 今参院選は、労働の側にとって厳しい結果に終わった。もっともそれは、職場や地域あるいは産業での、労働組合の日常的な活動を反映した結果に過ぎない。そのことの自覚なくして、労働組合が反貧困の中心になることはありえないだろう。分断を乗り越える、その具体的な取り組みは果たして始まっているか。

(かわむら・まさのり/北海学園大学准教授)


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