コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2014/4/17up)




◆ 3・11から三年、韓国の原爆二世・金亨律に学ぶ ◆

〈『部落解放』2014年4月号掲載〉

青柳優子

 二万人近い人が亡くなった3・11大震災から、早や三年が経とうとしている。「がんばれ、東北!」の掛け声ばかり鳴り響くなか、福島原発事故が招いた事態の深刻さはいまだ明らかではない。何が、どこまで破壊されたのか、いつ、どれほどの人が犠牲になり、今後どうなるのかもわからない。政府関係者は何ごともなかったかのように、事故の記憶を抹消する方向に人びとを誘導している。
 たとえば、私たち「放射能汚染を考える市民の会・みやぎ」の共同代表を務める加藤純二医師による「福島県浪江町の各世帯に貸与された放射能測定器について」の調査報告によれば、はじめから低い測定値が出るように設定されていた可能性が高いという。実際に貸与されたもの四台と別の測定器を比較して得た結果である。その問題の測定器は、浪江町が文部科学省の補助金で(福島県)二本松市出身の業者から七七〇〇台購入したものだ。周知のように、福島県内のモニタリングポスト設置工事でも「低い値を示す測定器」が問題になり、その実態を告発した業者が入札から外されて訴訟を起こしている(『毎日新聞』二〇一二年六月四日)。ただ、福島の地元ではこうした声すら発しにくいという点が問題である。
 この状況を打破するためにも、東京都知事選で「脱原発」派候補の一本化が実現して、東京だけでなく日本全体の「脱原発」派市民の声が反映されねばならなかった。前轍を踏まないために、今後は「脱原発」派市民内部で候補者調整を事前に行うためのルール作りを、真剣に考えていく必要がある。それと同時に、原爆および原発事故の被害実態を知り、内部被曝や遺伝などの問題も含めた放射能汚染への認識を深めていくことが大切だ。そして、被害者の訴えに耳を傾けて医療支援・生活支援を最優先することが重要だろう。
 これと関連して紹介したいのは、韓国の原爆被害者二世・金亨律である。一九四〇年広島に生まれて被爆した母親から一九七〇年に生まれ、三五歳で生涯を終えた彼は、一生涯原爆後遺症に苦しんだ。二〇〇二年三月にみずから「原爆被害者二世」と名のり出た彼は、翌年支援者とともに国家人権委員会に提訴して「健康実態調査」を実現させ、その結果を踏まえて二〇〇五年春には「原爆被害者特別法」の制定を先頭に立って推進した。この「特別法」の第一の特徴は、日本の「被爆者援護法」の国家補償の精神を踏まえたうえで、より積極的に被害者の立場にたって「先ず支援」を強調する。第二に、被爆者当人だけでなくその子女、つまり被爆二世・三世も原爆被害者と認定して、その医療・生活支援を政府が行うこととした。そして第三には、遺伝を含めた「被ばく者差別」を社会的に克服すべく、当事者および支援団体を中心にした社会的ネットワークの形成を制度化するように明文化した点である。「いのちは続かねばならない」と痛む身体を引きずりながら、みずからの「生存権」を主張し続けた彼の遺稿集、『被ばく者差別をこえて生きる――原爆被害者2世・金亨律とともに』(青柳純一編訳著)は、四月中旬に三一書房から刊行予定である。ぜひ、ご一読していただければと思う。

(あおやぎ・ゆうこ/翻訳家)


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