コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2014/6/23up)




◆ 外国からの建設労働者と家事・介護労働者の受け入れ政策 ◆

〈『部落解放』2014年6月号掲載〉

藤本伸樹

 東日本大震災の復興事業の加速と、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催準備のために、建設関連の需要が一気に高まっているなか、人手不足が深刻だという。安倍政権は四月四日、経済財政諮問会議と産業競争力合同会議において、まずは「緊急措置」として建設分野における外国人労働者の受け入れを増やす方針を固めた。
 緊急措置とは、建設現場で働きながら技術や知識を習得する「外国人技能実習生」の在留期間延長や帰国後の再入国を時限的に認めるというものだ。実習制度に基づく在留期間は現在最長三年だが、最長六年まで在留できるようにするのである。二〇一五年度から実施し、二〇二〇年度で終了するという。
 技能実習制度は日本の技術を途上国の人に学んでもらうことを目的に、「外国人研修・技能実習制度」として一九九三年に導入された。二〇一三年末時点で約一五万人が機械や縫製、農業などの仕事に携わっている。当初、来日一年目は研修生として労働関係法令が適用されなかったが、法改定により二〇一〇年七月以降は一年目から実習生として労働関係法令が適用されるようになった。それでも法律を無視した長時間労働や賃金不払い、パスポートや預金通帳の強制保管、暴力、セクハラ、契約期間内の強制帰国、過労死などの人権侵害が止むことなく起きている。被害を受けた実習生やその遺族による訴訟も多く提起されている。国会での議論をはじめ、米国国務省の人権報告書など、国内外から対策をとるよう繰り返し促されてきた。
 そうした背景から、今回提示された方針は、受け入れ企業に対する監督強化や優良な受け入れ団体への集約など新たな管理体制を構築するとしている。
 しかし、国際貢献を理念とするはずの制度に労働力政策を流し込むことはとうてい馴染まない。これらは本来別々に制度設計すべきものだ。移住労働者の人権保護に取り組む市民団体や弁護士グループは、「制度を廃止し、労働者として、生活者としての在留を保障すべきである」と、たんなる監視体制の強化ではなく、制度の抜本改正を繰り返し提言してきている。
 かつて日本の制度を模し「産業技術研修制度」を導入した韓国では、日本と同様の人権侵害の多発という事態を受けて二〇〇四年、当初から労働者として受け入れる「雇用許可制度」に踏み切り、二〇〇七年には研修制度を完全に廃止するに至ったのである。二〇〇七年は、外国籍住民の基本的権利の保護や社会統合をめざす「在韓外国人処遇基本法」を制定した年でもある。これらの施策は必ずしも高評価ばかりではない。しかし、日本が学ぶべき点は数多い。
 日本は、国連の人権条約実施に関する審査のたびに人種差別禁止法を制定するよう勧告を受けている。しかし、具体的な課題として前進しておらず、今回もそれらの法整備について政府内で議論すらされていない。
 政府は、建設労働者の受け入れに加えて、家事・介護分野での外国人の受け入れの検討も打ち出した。就業希望だが育児中の一七〇万人、および介護中の五一万人の合計二二〇万人強の日本女性の就労支援を目的と位置付けている。家事・介護は性別役割分業の最たる分野だが、その国際分業を志向するというのだろうか。
 安倍首相は、定住や永住を念頭に入れる「移民政策」ではない、中長期的な経済成長や女性の活躍推進の観点からの「外国人材の活用の仕組み」を強調する。それはまやかしの「国際協力」というオブラートにくるまれている。安く、しかも長居せずに働かせる都合のいい受け入れをめざしているとしか思えない。誰の人権もかすむことのない共生社会への道筋を市民社会から力を合わせて提示していきたい。

(ふじもと・のぶき/ヒューライツ大阪)


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