コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2014/7/11up)




◆ ソウルで繋がる横断幕の思い ◆

〈『部落解放』2014年7月号掲載〉

李信恵

 三月のある日、ツイッターで四月二〇日に韓国で「NO! RACISM 日韓友好ソウルパレード」が開催されると知った。主催は南ソウル大学日本語科助教授の桜井信栄さんで、毎週土曜日には自身の教え子たちなどとソウル市内の光化門で日本の保守団体による反韓デモに反対するプラカードデモを行っている。五月現在で、すでに二〇回以上。

 私はすぐに参加を表明した。昨年の七月の大阪での「仲良くしようぜパレード」、九月の「東京大行進」にも参加した。次はソウル、と聞いただけで期待が高まった。
 それからすぐの三月二五日には、大阪高裁で京都朝鮮学校襲撃事件の控訴審があり、支援者集会も開催された。いつもこの会場では、「ヘイトクライムのない社会を 民族教育権を保障しよう」と書かれた横断幕が掲げられている。

 この横断幕は、京都朝鮮初級学校のオモニ達が書き、この裁判を支える会にプレゼントしたもの。裁判の地裁判決前には、初級学校の子ども達が手形をいっぱい押した。
 この横断幕は、東京大行進でも掲げた。今度はソウルにも持って行きたいと、ふと思いついた。大阪・東京・ソウルで同時期に開催されるパレードに、「朝鮮」がないことが、ずっと気にかかっていた。しかし、この横断幕にはきっとそれが託されている、そう思った。
 そしてオモニ会の元会長の朴貞任オンニに
 「今度ソウルで日韓友好パレードを開催するけど、そこにこの横断幕を持って行きたい。あかんかな?」
 と尋ねた。
 貞任オンニは
 「それはいいわ。今の会長に聞いてみる、ちょっと待ってや」
 すぐさま、現会長のオモニの元へ行き
 「ソウルで今度パレードがあるって。そこでこの横断幕を掲げたいっていうてるけど、いい?」
 と声をかけてくれた。なかなか難しいやろな、どうなるんやろ? あかんかな、と思っていたら
 「横断幕がソウル!」
 「いいんちゃいますか」
 「ええよって」
 と、快諾。そんなに簡単でいいの? と、拍子抜けして驚くと
 「うちら話早いねん」
 「そうそう」
 「いつもこんなんやで」
 とオモニたちは笑った。

 私たち在日は自分たちのもう一つの祖国である国に、簡単に行けない現実がある。国と国は時々、人の心にまで壁を作るけど、そんなものを軽く飛び越えたい。子どもたちの笑顔の様な手形のある横断幕と一緒に、ソウルの街を歩きたい、そう思った。

 一方、前日の一九日には在特会系のヘイト街宣が鶴橋で開催されるとの告知があったため、飛行機をぎりぎりまで遅らせた。しかし、ヘイト街宣は中止に。ソウルに出発する直前まで皆で祝杯をあげ、ガード下にあるホルモン店の茂利屋では、この横断幕を広げた。横断幕は鶴橋の思いも背負った。

 当日の二〇日、集合場所付近では旅客船沈没事故の募金活動と署名が行われており、そちらにも協力。出発直前の集会では、参加者一同が黙とうをささげた。こんな時だからこそ、市民同士が協力し、痛みを分かち合いながら友好を深めることが必要だとも思った。

 日韓両国から駆け付けた参加者は、ソウルの街を約二時間かけて行進した。通りに並ぶ店や通行人から声援も届いた。日本語での応援もあった。私たちの思いはソウルでも繋がった。次はどの街で繋がるのか、楽しみだ。

(り・しね/フリーライター)


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