コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2014/9/19up)




◆ 難民を受け入れる日本へ ◆

〈『部落解放』2014年9月号掲載〉

石川えり

 世界中の難民状態にある人は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、五〇〇〇万人を超え、第二次大戦後最多となっている。昨年、日本政府に対して難民申請を行った人数も過去最高の三二六〇人にのぼった一方、難民として認定された人は六人のみであった。ひと桁の難民認定は一九九七年以降初で、難民認定率は〇・一%、過去最低である。多くの人たちが日本を頼りに来日し、政府に対して難民としての保護を求める難民申請をしているなか、認められないというこの現状に、国内外の関係者からも失望の声があがっている。
 世界中で難民が増えている主な原因はシリアでの内戦であり、毎日平均九五〇〇人(およそ六〇秒に一家族)が避難を余儀なくされている状況が続いている。たとえば先進国のイギリス・アメリカ・オーストラリアでは、難民としての保護を求める申請を政府へ対して行った人のうち、九割以上が難民として認められている。また、スウェーデンは難民申請から約一〇日で永住許可を付与しており、家族呼び寄せも可能である。一方日本では、二〇一一年から三年間で申請をしたシリア人三四人全員の難民申請が認められず、却下された。日本政府はうち三三人が人道配慮により在留資格を得ている旨説明しているが、「準難民」的な立場であるため、条約難民に対して保証される権利やサービスを享受することができない不利益がある。たとえば永住許可の際の優遇がない、難民旅行証明書(いわゆる難民パスポート)の付与がない、日本政府が実施する定住支援を受けることができず、また、実務上家族呼び寄せが可能な在留資格が付与されていないなどの問題がある。妻子が故郷にいられず、隣国の難民キャンプに逃れているシリア難民の男性は、日本への入国後、一貫して家族と早く再会できる途を探っていたが、現状ではその方策が尽きてしまっている。妻子が滞在するイラクの難民キャンプも「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」による内戦に巻き込まれようとしており、一刻も早い日本での再会が切望される。
 日本政府の難民への対応はなぜここまでも厳しいのか? 厳しい難民認定のみならず、申請を待つあいだの待遇も大変厳しい。平均三年間とされる審査の結果を待つあいだのセーフティーネットが非常に限られており、ホームレスとなる難民申請者もいる。七月上旬現在、難民支援協会では一〇人以上のホームレスを把握しており、なかには公園で寝泊まりしているときに若者数名に攻撃され、負傷した人もいる。シェルターがないために女性が他人の家に泊まらざるを得ず、望まない妊娠をした人もいる。社会保障も非常に限られ、社会から排除されたかたちで難民申請者が日本での滞在を続けているこの現実を、私たちはどう受け止めるのか。難民支援に取り組む団体が連携し、適正な難民認定手続き、申請中の待遇確保、平等な難民支援策など五点を、難民保護法制が必要として提言した。難民が日本に来てよかったと思ってもらい、難民の力を生かしていくためにも、真摯な制度改善に向けた取り組みの必要性を現場からも発信していきたいと考えている。

(いしかわ・えり/認定NPO法人 難民支援協会 事務局長)


コラム・水平線INDEXに戻る



HOME

JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600