コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2015/1/5up)




◆ 日韓の弁護士交流から学ぶ ◆

〈『部落解放』2014年12月号掲載〉

在間秀和

 韓国に「民主社会のための弁護士会」(略称民弁=jという弁護士集団がある。全斗煥の軍事独裁政治体制に反対する民主化運動の高揚の中で、一九八八年五月に結成された。権力の弾圧に抗して政治犯の救援や人権問題、そして労働問題に献身的に取り組んできた弁護士の集まりである。そのメンバーには故盧武鉉元大統領や現在のソウル市長である朴元淳弁護士が名を連ねる。私が所属する大阪労働者弁護団は、この民弁と一九九九年三月以来、相互訪問の形で毎年定期交流を続けてきた。
 韓国の労働法制は、日本と極めて似通っている。日本の植民地支配の影響であることは間違いないだろう。それにしても、生起する労働問題もその多くが共通する。韓国では非正規労働者の割合は日本より多く五〇%を超えるといわれるが、不安定雇用、低賃金などの問題はほとんど同じである。両弁護団は、労働問題に焦点を当て一五年にわたり情報交換を続けてきた。韓国の裁判所では、日本の裁判所の判例がしばしば取り上げられ論議されるという。たまに、民弁の弁護士から私たちに直接電話で、「○○の問題についての判例を送ってほしい」等の要請があったりする。また、民弁の弁護士が権力から弾圧を受けた時には、日本から抗議声明を送るということもある。手探りで始めた交流も、相互の堅い信頼関係に発展した。私たちの弁護団には何人かの在日韓国・朝鮮人弁護士も参加している。労働者の権利擁護、労働運動の発展のための活動では、国境も、民族の違いもなきに等しい。言葉の問題は確かにある。しかしお互い理解をしあえばさほどの問題ではない。
 このような私たちの感覚からすれば、昨今の日韓を巡る状況は嘆かわしい限りである。今の安倍政権に相互理解を求めようとする姿勢は全くみられない。ひたすら居丈高な敵対姿勢しか見えない。こうなれば、韓国側としても対抗せざるを得ない。対立は螺旋状に上昇していく。最近は、朝鮮侵略に打って出た晩年の豊臣秀吉と安倍首相が重なるように私には思える。
 私は二〇年前から戦後補償問題にも取り組んできた。戦時中朝鮮半島から徴用され、広島の三菱重工で強制労働を強いられ被爆した人たちに対する補償問題である。しかし三菱重工は未だにその責任を認めようとしない。以前ある元徴用工がしみじみと語ってくれた。「私たちが一番望んでいるのは、過去何があったかを認めてくれることだ……」。そう、問題は相互理解である。「吉田証言は虚偽!」と大声をあげて「慰安婦問題」そのものを否定する、という姿勢は最悪である。仮に「他国でも従軍慰安婦制度があった」というならば、まずその事実を知ろうではないか。そしてその上でそれを是とするのか否かを議論すれば良い。「風俗活用」などというとんでもない話が許されるか否かを議論すべきだろう。もっとも重要なのは、虚心坦懐に事実を知ること。そのためには相互理解の姿勢は大前提である。立場の違いは当然として、お互いに理解しあうことから信頼が生まれる。

(ざいま・ひでかず/弁護士)


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