コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2015/4/21up)




◆ 女性に対する暴力に反対の声をあげる男性たち ◆

〈『部落解放』2015年4月号掲載〉

多賀 太

 女性に対する暴力をなくすために男性が率先して声をあげる「ホワイトリボンキャンペーン(WRC)」という世界的な取り組みがある。きっかけは、一九八九年、カナダの有名工科大学に若い男が侵入し、女性蔑視の言葉を叫びながら女子学生一四人を殺害して自殺を図った事件である。この問題を深刻に受け止めたカナダの男性たちが、女性に対する暴力に反対する意思表示として白いリボンをつけるよう呼びかけたところ、カナダ全国で約一〇万人もの男性がこれに賛同して応えたという。現在では五〇カ国以上で同じ趣旨の活動が行われているとされる。
 実は、日本にもこの流れを汲む「ホワイトリボンキャンペーン・KANSAI」の活動がある。二〇一二年、来日した英国WRC理事の講演に感銘を受けた人びとの手で内閣府助成事業として発足し、現在は、被害女性の支援団体であるNPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」などと連携しつつ、男性主体の市民活動として啓発を行っている(http://whiteribbon-kansai.blogspot.jp/)。  日本でも、女性に対する暴力の現状は深刻だ。二〇一二年の内閣府調査によると、女性の約八%が性暴力の被害を受けており、既婚女性の三人に一人が配偶者から何らかの暴力を受けた経験をもつ。二〇一三年の検挙事案のうち、配偶者間での「暴行」および「傷害」被害者の九四%、「殺人」被害者の六八%が女性である。ところが、多くの男性たちは、こうした問題に対して沈黙したままである。
 「女性に対する暴力」と聞くと、何となく男である自分が責められているようで居心地が悪いという男性は少なくないだろう。実は筆者もかつてはそうだった。しかし、WRCの創始者マイケル・カウフマンが語った次の言葉を聞いて思い直した。「女性に暴力を振るっていない男性が罪悪感を覚える必要はない。しかし、女性に対する暴力をなくすために男性にもできることがあるのに何もしていないとすれば、そのことはぜひ問い直してほしい」。
 一部の男性たちからは「女性から男性への暴力もあるのに、なぜ男性から女性への暴力だけをことさら問題にするのか」との声を聞くこともある。もちろん、女性から男性への暴力も決して許されない。しかし、男性に暴力を振るう女性がいることが、男性から女性への暴力を見過ごしてよい理由にはならない。
 男性からの暴力被害に遭った女性や、母親に暴力を振るう父親を見て育った子どもたちのなかには、男性をまったく信用できなくなったり、暴力的な「男らしさ」しかイメージできなくなったりしている人も少なくない。そうした人びとが少しでも安心して暮らせるよう、これ以上将来の加害者になる男性を増やさぬよう、男性には、女性に対して決して暴力を振るわないことを誓い、非暴力的な成人男性の良きモデルを自ら示していく責任が課せられているのではないだろうか。WRCに賛同する男性たちが身に付けた白いリボンは、そうした決意と信念の徴なのである。

(たが・ふとし/ホワイトリボンキャンペーン・KANSAI企画委員会座長)


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