コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2015/6/22up)




◆ 「素通り」から「共感」へ ◆

〈『部落解放』2015年6月号掲載〉

菱山南帆子

 このタイトルは、昨年八月から始めた街宣活動で駅頭に立ちながら常に頭に浮かび自分を励ます言葉です。
 昨年七月一日、安倍政権は集団的自衛権行使を解釈改憲で容認する閣議決定を行いました。私は連日、首相官邸前で多くの仲間と共に闘い抜きました。そこで「共同」の力を実感し、現在の総がかり行動をスタートさせることができました。
 しかし、私は「暴走を本当に止められるだろうか」「もっと持続的に広がらないのか」という強い危機感と焦り、手詰まり感にとらわれました。そんななか、ある駅前の書店に立ち寄ったとき、外から店内に響き渡る「私たちは集団的自衛権に反対します!」という女性の声が聞こえてきました。この声に雲が垂れ込めたような頭の中がさっと切り替わり、勇気を与えてくれました。官邸前での怒りが思い起こされ「立ち止まるものか」そして「このような街宣を全国に広めたい!」と考え、仲間に提案し「一つの運動」としての街宣に取り組むようになったのです。
 あの閣議決定の直前の六月二九日の新宿でAさん、決定後の一一月一一日には日比谷公園でBさんの焼身抗議がありました。Aさんは命を取り留め、Bさんは死亡しました。お二人とも「集団的自衛権行使反対」を明確に訴えられていました。
 二人の行動は私が抱いた危機感、焦り、手詰まり感と同じような思いに突き動かされたのではないかと思われて仕方がないのです。この二人は安倍政権の戦争政策の犠牲者であり、私たちの運動が二人のそういった思いの受け皿になれなかった責任もあると思います。
 よく私が街頭で話すことがあります。水のなかの蛙に気づかれないよう水温を上げ慣らし、ついには茹で上げてしまう。動くたび電気ショックを加えられ続けたハツカネズミはやがて、水に入れられても動くことはなく溺死してしまう。安倍政権は「環境権など抵抗感のないテーマで改憲を経験し、改憲は怖くないと国民に慣れてもらう」と公言しています。これは「国民総茹で蛙化」宣言に他なりません。
 私は小五のとき、障がい者差別発言をした担任教師に抗議して五人で授業ボイコットをしました。中一のときにはイラク開戦に反対し一〇人近い仲間と学内でビラまきをしました。しかし、周りの大人からは「妥協も必要」「もっと勉強して大人になってから」などという圧力をずっとかけられてきました。声を上げずに大人になることは、茹で蛙や動かないハツカネズミになることだと確信しています。
 駅頭はいつの日か、必ずスクラムを組む仲間が毎日のように通る場所です。そこで、声を上げ行動する市民を日常的に身近に目にし、耳にしてもらうことは、市民の立ち上がりを促す大きな環境条件になります。まず一人の共感を求め一〇〇〇人の素通りを恐れず取り組み、必ず一〇〇〇人の素通りを一〇〇〇人の共感へと変えていくために、私はこれからも街頭に立ち続けていこうと思います。

(ひしやま・なほこ/許すな! 憲法改悪市民連絡会)


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