コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2015/10/19up)




◆ 第11回UKタイコフェスティバルに参加して ◆

〈『部落解放』2015年10月号掲載〉

浅居明彦

 二〇一五年七月二日から七日まで、イギリス・エクセター市で開催された第一一回UKタイコフェスティバルに参加してきました。きっかけとなったのは、大会創始者であるジョナサンカービィ氏が二〇一二年に大阪の国立民族学博物館を訪れて、展示場で太鼓集団「怒」の活動と歴史、そして背後にある日本の部落差別の存在を知ったことです。自分たちの活用している和太鼓に部落差別が関係していることに大きな衝撃を受けたジョナサンカービィ氏は、すぐさま展示責任者の寺田吉孝教授に「怒」の出演の橋渡しを願い出られましたが、第一〇回への出演は、予算の関係で不可能となりました。滞在費は主催者負担ということですが、渡航費は参加者負担だったからです。途方に暮れて一度はあきらめかけましたが、部落解放同盟大阪府連のバックアップを受け、これまでの演奏会で貯めてきた謝礼金や、インターネットのクラウドファンディングの活用、さらには部落解放同盟の全国大会でもカンパをいただいた結果、第一一回のフェスティバルに出演することができたのです。まずは、協力いただいた多くの方々に、お礼を申し上げたいと思います。
 さて、今回の渡英の一番の成果は、何といっても、参加したメンバーにとって一生のなかでそうそうできない感動を得られたことでしょう。大阪の部落の六つの太鼓グループでつくる太鼓ユニット「絆」での参加を決意した「怒」と「絆」のリーダー谷本直也氏は、一五人の選抜メンバーの選考にあたってかなり苦しんだようですが、何度も練習を重ねた苦労も、コンサート後の大きな雄叫びとスタンディングオベーションで、すべてむくわれたと思います。会場の客席で見ていた私も、押さえ切れないほどの感動を覚えました。
 終了後、ホールから出ると、大勢の観客を見送る彼ら彼女らの姿がありました。涙しながらハグしていたり、笑顔で一緒にカメラに収まる姿を見ると、どれもまるでドラマのワンシーンのようでした。
 コンサートの前には、寺田吉孝教授が作成されたドキュメント映画「怒―大阪浪速の太鼓集団」が上映されました。寺田教授は、「メインの太鼓演奏の前に映画を観に来る人は二〇〜三〇人ぐらいだろう」と話していましたが、意外にも四六〇名収容の会場に八割ぐらいの人が埋まり、最後まで真剣に観てくれていました。映画のあとで一人の中年男性が私のところへ来られ、名刺を差し出しました。名刺には日本で一番有名なプロ和太鼓グループ「鼓童」のヨーロッパツアー責任者と書かれており、聞けば沖縄にルーツを持つ方でした。沖縄にはプロ太鼓グループ「残波大獅子太鼓」があって、「怒」の結成に大きなきっかけをくださりました。映画の冒頭で、「残波大獅子太鼓」の主宰者・新垣武常氏が「怒」と部落差別のことを話されるシーンがありますが、それを見られて、今も沖縄と交流があるのかとたずねられました。私が毎年交流し続けていることを伝えると、「日本の若者たちもまだまだ見捨てたものじゃないですね。私は今、感情をコントロールできません」というなり、涙を流して私にハグをしてきました。私と中年オヤジの感動のハグシーンです。太鼓ユニット「絆」の添え物のような私でしたが、この感動を多くの方々に伝えていきたいです。

(あさい・あけひこ/部落解放同盟浪速支部支部長)


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