コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2015/12/15up)




◆ 茨木・イスラムの日々 ◆

〈『部落解放』2015年12月号掲載〉

北口 学

 大阪万博の「太陽の塔」の北部に位置する茨木市の被差別部落に、大阪で最初のイスラム・モスクが設立されて八年目。週末には地域のなかにアジアやアフリカの民族衣装を着た人びとの姿が見られます。9・11以降、世界中でイスラム教徒やアラブ人に対する忌避や差別が続発しており、日本国内においてもモスク建設反対運動や放火、「外人出て行け」という張り紙、ひどい場合には玄関に猫の死骸がぶら下げられたり、コーランが焼かれる事件も起こっています。茨木市内の大学でも数年前に、「アルカイダ!」といじめられたインド人学生が自殺し、父親も後追い自殺したという悲劇も生まれています。
 全世界で起こっているイスラムフォビア(イスラム嫌悪)が、日本国内でも爆発する可能性も危惧されています。
 文部科学省が海外、特にアジアからの留学生を数年で数倍に増やすという計画を進めていることから、今後、日本のイスラム教徒の数は増加の一途をたどることが予想されています。なぜなら、アジアの半数がイスラム教徒の人びとだからです。今後、多くの日本人が未知なるイスラム教徒の人びとと出会う機会が増えていきます。
 モスクでは、週末になれば一〇〇人を超える諸外国(約三〇カ国)のイスラム教徒の人びとが礼拝や交流活動をされています。彼らの日々の暮らしや生活の不安、不自由さを相談事業で支援しているのは、多文化・共生をめざす「茨木市立いのち・愛・ゆめセンター」と地域の人びとです。この施設は部落解放運動によって建てられました。来訪者はイスラム教徒のみならず、幅広い国籍・民族・多様な文化的背景を持つ人たちへと拡大しています。また、大阪府人権協会が中心となって、理解のある弁護士と協力し、外国人向けの無料法律相談も行いました。
 一方、地域には、設立時に一部の住民の反対運動が起こった「コリア国際学園」もあります。部落とコリア、イスラムをかかえるこの地域では、部落解放同盟の支部をはじめさまざまな人たちとともに、三者の交流の取り組みを七年以上継続してきました。イスラム料理交流会や、キムチ作り教室、また毎年恒例になったフットサル大会や、二四時間サッカーなどを開催し大盛況でした。またその活動内容を、地域のフリーペーパーで報告するなど、地道に多様で息の長い活動を展開しています。
 3・11の東日本大震災のおりには、自治体・JICAと協力してシェルターを作り、一〇〇人を超える被災した東北のムスリムの留学生や大学教員を受け入れました。この活動ができたのも、日ごろの多文化の交流があったからだと思います。
 イスラム教には、ハラールという食生活のルールがあります。地域では滞日年月の長いイスラム教徒の人びとによって設立された「国際イスラム交流支援協会」が、ハラール認証サポートや講演など、在日イスラム教徒の生活向上活動もしています。大阪府庁や全国の中小企業や旅行産業、サービス業などにイスラム教の理解推進などの活動をしています。
 隠れキリシタンにもゆかりあるこの地域の交流事業が、多様な文化の発信元として、あらためて注目されているのです。

(きたぐち・まなぶ/大阪芸術大学 教員)


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