コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2016/4/18up)




◆ 「不登校対策法」がもたらす子どもの危機 ◆

〈『部落解放』2016年4月号掲載〉

内田良子

 今年は文部省が不登校を「学校ぎらい」と分類して長期欠席者の統計をとるようになって五〇年になります。実に半世紀にわたって、義務教育課程の子どもたちは、苦難の道を歩んできたことになります。
 大人は学校を休むことを問題にし、いじめや体罰・懲罰的指導で傷ついた子どもたちは、学校を休めないことに苦しみ悩んできました。ひどいいじめにあって深く傷ついていても学校を休むことを認めてもらえず、生きることに絶望して命を断っていく子どもたちが後を断ちません。
 日本全体の自殺率が減少していくなかで、中学生と高校生の自殺率は二〇一一年以降著しく上昇しています。中高生の自殺の報道が増え、電車に飛びこむ子どもたちが増えています。公共の場を選んでこの世を去っていく子どもたちが「私たちの死を忘れないでほしい。なぜ死を選ばざるをえないのか考えてほしい」と叫んでいるように思え、心が痛みます。学校教育環境を改善する努力を怠り、いじめや指導による自殺を子ども同士の問題を矮小化する大人たちへの抗議の死とも受けとれます。
 「学校なんて大嫌い みんなで命を削るから 先生はもっときらい 弱った心をふみつけるから」
 一九八四年に命を断った中学三年生尾山奈々さんが残した言葉です。学校を休まなかった子どもたちは命を断っていき、親の理解を得て学校を休むことができた子どもたちは生きています。不登校は「命の非常口」なのです。
 昨年九月以降、「超党派フリースクール等議員連盟」が「不登校対策法」を国会に上程しようとしています。私たち市民の知るかぎり、今までに四回にわたって試案がつくられました。最新の座長試案は二月二日に開示されました。見識を疑うのは「不登校特例校」を設置するという発想です。存在をかけて学校をボイコットしている子どもたちを収容する「学校」は、学校教育制度に従わない者の収容所になりかねません。学校で傷ついた子どもたちに必要なのは、家という居場所での傷ついた心身の疲労の回復と、人間不信や集団への恐怖からの回復です。子どもをさらに追いこむ「不登校対策法」はいりません。
  学校 行けなくて苦しい
  学校 行きたくなくて苦しい
  学校 行って苦しい
  学校に来た私をみて よかったよかった
  先生何がよかったの
  父さん何がよかったの
  母さん何がよかったの
   (堂野博之「あかね色の空を見たよ―五年の不登校から立ち上がって」高文研)

(うちだ りょうこ/子ども相談室「モモの部屋」)


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