コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2019/7/17up)




◆ 会見は国民の知る権利に応える場 ◆

『部落解放』2019年6月号掲載

望月衣塑子

 新元号が「令和」に決まった発表会見で「日本の万葉集から引用」と意気揚々と語り、テレビ局のはしごまでした安倍晋三首相。だが、普段は記者会見をほとんどしない。昨年も一昨年も四回ずつだ。番記者でさえ、朝夕の「ぶらさがり」でせいぜい一、二問という。第一次政権での「ぶらさがり会見」で足をすくわれたという思いがあるのか。広報には積極的だが、説明責任については一貫して後ろ向きだ。
 私が一日二回の菅義偉官房長官の会見に行くようになり、数カ月が過ぎた二〇一七年秋以降、進行役の上村秀紀報道室長が「質問簡潔に」と、早く終えるよう促すようになった。そもそも私が当てられるのは政治部記者の質問が出尽くした最後だが、私だけは二問で打ち切られた。今年二月に新聞労連などが抗議声明を出し、官邸前で記者たちがデモを行う直前から、妨害はなくなったが、今も二問の制限は続いている。
 「質問の前段が長い」と社内外から指摘され、質問を事前に精査し、昨年の三月以降は、他の記者と比べても長すぎることがないようにしていた(質問には前提の説明が必要だが、これも短くした)。ところが、妨害はやまなかった。質問が終わっているのに「質問に移って」と言われたこともあり、苦笑するしかなかった。官邸側は「妨害行為でない」としていたが、質問内容や時間の長短を問題にしているのではなく、「短く終わらせたい」「質問が長いと印象づけたい」という動機が見て取れた。菅官房長官は、一体、私の質問の何をそんなに恐れているのだろう。
 この妨害行為は、昨年九月以降、私が沖縄の県知事選や辺野古の埋め立て、県民投票の質問をするようになってからさらに悪化。昨年一二月、辺野古の赤土混じりの土砂投入について「防衛局は違法性を確認できていない」「赤土が広がっている」と質問すると、「事実誤認、不適切だ」と断定し、会社に抗議文を寄越した。この抗議は、今年一月に東京新聞一面で「県に無断 土砂割合変更 環境に悪影響の恐れ」と指摘するまで、官邸から「なんであんな質問したのか説明せよ」との抗議が続いた。質問内容を理解したり、確認したりせず、反射的に抗議していたのだろうか。
 防衛局は四月九日現在まで、赤土の有無を調べる土砂検査をしていない、もしくは、検査していても結果を県に出していない。何も難しいことではない。「適法だ」と官邸が胸を張るのならば、沖縄防衛局は、県の立ち入り調査を堂々と受け入れ、投入中の土砂サンプルを県に提供すればいい。那覇空港など他の埋め立てでは、国は検査結果を県に出しており、辺野古で拒否する理由はない。また「汚濁防止措置を講じている」というが、海中で赤土が広がっているさまは、現場を訪れれば一目瞭然だ。
 菅官房長官は国会で、定例会見を「政府の見解を伝える場」と答弁した。果たしてそうか。会見は政府のためでも、メディアのためでもなく、政府が国民の知る権利に応える場であり、事実を調べるのがメディアの役割だ。権力の監視役を放棄すればメディアは存在意義を失う。官邸の姿勢と同時に、メディアの在りようがいま問われている。

(もちづき・いそこ/東京新聞記者)


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