コラム・水平線

月刊誌『部落解放』の巻頭コラム「水平線」を著者のご了解を得て、転載いたします。

(2020/7/15up)




◆ 子どもたちのいない学校で…… ◆

〈『部落解放』2020年7月号掲載〉

久保 敬

 この原稿を書いている今、新型コロナウイルス感染拡大防止のため大阪市の学校では休校措置がつづいています。
 新型コロナウイルス感染が広がりつつあった二月二七日、松井大阪市長が、二九日から二週間の臨時休校を発表し、それにつづくように安倍首相が全国一斉に休校要請を行いました。突然の発表に教職員は戸惑いながらも、夜中までかかって休校中の学習課題プリントなどを作成しました。しかし、休校になることについての説明や家での安全な過ごし方や休校後の見通しなど、子どもたちにはきちんと伝えることができないまま、二月二八日を最後に休校に入りました。卒業式の練習が始まろうとしていた六年生は、卒業式ができなくなるのではないかという不安を抱えたまま帰宅していきました。ぶっつけ本番の卒業式だけは何とかできたものの、入学式はできませんでした。
 中国武漢での新型コロナウイルス感染のニュースに接した時点では、まさかこのような事態になるとは思いもしませんでした。臨時休校が長引くなか、学校ホームページや保護者メールでの連絡の他、学級担任が週に一度家庭に電話をし、家庭学習の進み具合を確かめたり、困っていることや悩んでいることはないかと保護者や子どもたちと話したりする以外、できることがありません。日頃手の回らない学習環境の整備や研修をしようと教職員と話していましたが、緊急事態宣言が出されてからは教職員も在宅勤務になり、それもできなくなりました。今、学校が子どもや保護者にできることは何か自問自答する日々です。
 当たり前に学校があって、当たり前に子どもたちと学習したり遊んだり、そんな日常が本当は当たり前でない有難いことなんだとしみじみ感じています。
 なかなか学校再開の目途が立たない状況に、子どもたちの学習の遅れがメディアでも大きく取りあげられ、双方向のオンライン授業や九月入学などが話題になっていますが、子どもの学ぶ権利を保障しようというのとは、何か違うような気がしています。休校している間の授業時数を取り戻すことばかりに目が向いているのは、学習指導要領に定められた通りに、検定教科書を使って指導しなければならないと思い込んでいるからではないでしょうか。守ろうとしているものは、子どもの学ぶ権利ではなく、学習指導要領であるように思えます。
 今、休校を強いられている子どもたちには「授業の遅れなんか気にしなくて大丈夫。学校からの課題以外に、今だからできることにチャレンジして、新しい自分で発見してほしい。それこそが『学ぶ』ということだから」とメッセージを送っています。学校が再開されたら、このような事態になったからこそ気づいたこと、考えたことを自分の生き方や社会に生かしていけるよう学習を進めていきたいと思います。きっと、今まで当たり前にできていたさまざまな学習や活動が「新しい生活様式」のもとでは制限されるに違いありません。しかし、だからこそ「新しい学び」を創っていくさまざまなチャレンジができると前向きに捉えています。「学び」とは何か、常に問い直しつつ、子どもたちと共に新たな一歩を踏み出していきたいと思います。

(くぼ・たかし/大阪市立木川南小学校教員)


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